スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【小話】彼と彼女の日常

【死神屋の事情】のとーりさ
本編後でSS後のはなし。
-----

「冬哉」

 目が覚めて、ただ一言、彼の名前を呼ぶ。呼ばれた本人は、気だるそうにこちらを振り向く。一般男性に比べれば長い髪を結うこともせず、Yシャツのボタンを止める指先が、まだ寝ぼけているのか一つずれてボタンを止めている。
 それを見て、笑いながら彼のYシャツに手を伸ばして、掛け間違えたボタンを直す。

「寝ぼけてる?」
「……ん、かもしれない。朝から仕事って久々だし」
「非常勤みたいなものだもんね」
「んー、まあ来月からは常勤になるらしい」
「そうなの?」
「一人常勤が辞めるんだってさ。で俺が代わり」
「なるほどね。ってネクタイよれてる」
「ん? ああ、本当だ。直して」
「全くもう……」

 呆れながら笑ってしまう。仕方がないなあ、とネクタイを直して、彼が髪を結っている間にジャケットを持ってくる。やっていることはまるで妻のようだと思いつつ、そうなるのも時間の問題であることを知っている。
 大学を卒業して、仕事に就いたら……。もしかしたら、仕事に就く前かもしれない。彼の妻になるのは、この世界では既に決まっていることだ。
 デスマスター同士の婚姻の不可を撤廃し、魔法がなくなった世界。この世界を作ったのは誰でもない俐咋で、その世界を望んだのも俐咋だ。

「俐咋、授業は?」
「今日は4限から。午後だからのんびりしてから行くよ」
「ああ、じゃあ送ってく必要はないのか……。それまでに帰ってきたら送ってくよ」
「本当? 帰ってきてたらお願いね」
「ん、了解。いってきます」
「いってらっしゃ……って、朝御飯食べたの?」
「お前が寝てる間に食べたよ。ああ、残り冷蔵庫にあるから。じゃ」
「ありがとう、いってらっしゃい」

 マンションの扉が閉まって、鍵を掛ける音がする。その音を聞いて、彼は出勤したのだとはっきり理解する。
 彼が今朝、ご飯に食べた残りがあると言っていたのを思い出し、俐咋は冷蔵庫をあける。ラップのかかったサラダボウルの中にツナサラダ、大皿にはだし巻き玉子。寝ぼけていた割りにはしっかり料理していたことに驚く。その二つの料理を取り出して、だし巻き玉子を電子レンジにいれて加熱する。
 朝からの勤務だと言っていたから、弁当を作ってあげれば良かったかもしれない。けれど、せがまれなかったということはきっと昼過ぎには退勤するのだろう。そんなことを考えながら、朝食を食べた。

 * * *

 きりーつ、れーい、ちゃくせーき、と授業前に行う一通りの儀式。それが終わって、喋り出す生徒も居れば、寝る体勢になる生徒もいる。それを知っていて、冬哉は特に注意しない。結果さえよければそれでいい。

「お前らー、先週の課題やってきたかー。授業終わるときに回収すっぞー。振替授業だからって忘れてんじゃねーぞー」

 その一声に忘れていた生徒たちのざわめきが聞こえる。きっと彼らはこの授業中に課題をやるだろう。退勤までに提出されていれば多めに見よう、と決めて冬哉は先週やったことを話し、教科書のとおりに地殻変動についての話を始めた。

 その授業が終わって、理科準備室に戻ってくる。課題を集めたために行きよりも荷物が増えたが、プリント30枚程度だ。どうって事ない。冬哉が戻ってくると同時に、他の先生が授業に出て行く。準備室が誰もいない状態になって、少々寂しい気分になる。
 机に教科書やスケジュール帳を置き、集めた課題に目を通す。こういった課題を確認するのに、持ち帰って仕事をしてはいけないという決まりがある。退勤するまでに確認してしまおう、と、席を立ちコーヒーを入れていると、準備室の扉が開いた。

「あの、或河先生いらっしゃいま……あ、先生!」
「おう、どうした川島」
「あ、えっと、今日提出だった課題、さっき……その、出し忘れちゃって……」
「ああ、間に合ったのか。授業中にやってて間に合うかなーとは思ってたけど」
「う、バレてた……」
「ははは、教卓からって意外と見えるもんだぜ。俺の机置いといてくれ」
「あ、はい。……あの」
「なんだ?」
「先生、来月から常勤になるんですよね」
「ん、ああ、まあそうみたいだな。松野さんが辞めるって話は皆知ってんだろ?」

 何故辞めるのか、詳しいことは聞いていない。人それぞれ、理由はあるし、言えない事だってある。この世界が修正された歴史の世界であるというのも、知る人はいないのだ。

「はい……。結婚なさるとか聞いてますけど」
「へえ」
「あれ、知らなかったんですか?」
「なんで辞めるかっていう理由を聞くのは、松野さんに失礼かと思って聞いてないからな。結婚か……俺も早くしたいなー」
「えっ?!」
「んだよ、驚く程の事か」
「その、お相手いらっしゃるんですか……?」
「いるよ、学生時代からの彼女」
「……そう、なんですか……」

 明らかに落胆する少女に、はあ、と冬哉は呆れたため息を吐き出した。

「言っとくが、教師に恋をするなんざやめとけ。こっちが手ェ出したら立派な犯罪だしな。悪いな、好意を持たれるのは嫌いじゃないが、心底望んでいた相手が隣にいる身としては、生徒とスリリングなお遊びをする余裕なんてねえよ」

 一般的に見れば、川島という生徒は可愛い部類である。この年頃に、年上に憧れるのは分からない話でもない。
 冬哉は課題をファイルに纏めてしまうと、鞄にスケジュール帳を入れて、生徒を置き去りに、準備室を立ち去った。

 * * *

 リビングにある机で、俐咋は課題をやっていた。簡単なレポート課題で、すぐに終わるだろうと思っていたのだが、思いの外長くなっていて、文章を削っている。
 そんな最中、扉の鍵が開く音がして、俐咋は動作を止めた。

「おかえり、冬哉」
「……」
「冬哉?」

 無言で抱きしめてくる彼の背に、手を回す。何かあったのだろうか、と疑問に思っていると、ぽつり、と一言聴こえた。

「アカデミーの時はどうとも思ってなかったのに、いざ好意を向けられると怖い……」
「何ていう弱音吐いてんのよ、あほか」

 心配して損したわ!と冬哉の顔に、平手打ちを食らわせる。その行動が冬哉には予想外だったようで、至極驚いた顔をした。

「誰かに好意を向けられたのはまあいいとして、今更っていうかあんたがモテるのは慣れてるし。怖いってどういう事よ怖いって」
「怖いんだよ! こう、なんていうの? 責任とって!みたいなそんな感じ? すげえ怖い」
「…………」
「そんな冷めた目で見ないで俐咋さん」
「何があったかは聞かないけど、犯罪起こすのはやめてよね」
「はい。分かってる。俺には俐咋がいればそれでいいからさ」
「そうやって言うことがいちいち……」
「いちいち?」
「期待した目で見ないでよ! 分かってるくせに!」
「……期待しちゃいけなかった?」

 すうと目を細めて優しい笑顔をする彼に、どきっとする。彼が無意識でこういうことをして、誰かを惚れさせている。そんなのは、ずっと前から知っている。

「これだから天然たらしって言われるのよ……。恋人の私の身にもなってください。あんたに惚れた女に刺されて死ぬとか嫌だからね」
「それはさすがに俺が困る。何のためにこの世界でお前を探したのか、意味が分からなくなる」
「でしょう」
「俺自身は浮気しないからさ」
「あんたのその仕草自体が、人を寄せ付けるのよ。モテるんだから、断り方もちゃんと考えなさいよ」
「はい、了解です」

-------

まとまらなくなったので切りのいいところでシャキーン。

Pagination

Utility

Search

リゼットの処方箋

2Dパズル系ポイント・アンド・クリックアドベンチャーゲーム!!

ブラウザであそべる無料ゲームです。
フォント制作でクレジットしていただいております。リゼット先生かわいいです。

M3-2015春











MOJAおしながきはこちら

C86








M3-2014春



melodybanner400.png




MOJAおしながきはこちら

About

雛瀬シズキ
グラフィックデザインとかWebデザインとかしてる人。

乙女寄りゲーム制作:
OzoneAsterisk
音系フリーダムサークル:
MOJA
コンセプトCDサークル:
Rit.
総合創作系企画サークル:
0から始めよう!

O3*Wiki 更新記録

創作Wikiの更新記録です。
(RSS読み込み)
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。